非常時こそ栄養を!管理栄養士が解説する備蓄のポイント

こんにちは!外部執筆スタッフ 管理栄養士の藤井です。
私は、食品メーカーでのレシピ開発や食育講師の経験を活かし、現在はフリーランス栄養士として栄養指導やレシピ開発、セミナー講師等の業務を幅広く行っています。

地震や台風など、いつ起こるかわからない災害。そんな時に心身ともに健康を維持するためには、栄養バランスがとても大切です。
この記事では、管理栄養士の視点から、非常時に栄養が摂れる備蓄食料の選び方やストック方法を詳しくご紹介します。

<災害に備える基本の備蓄:水、食料、そして心の準備>

災害への備えの第一歩は、家族全員で災害時の行動計画を立てることです。避難場所、連絡方法、そして各自の役割を明確にしておくことが重要です。
また、自宅のどこに備蓄品を置くか、家族全員で共有しておく必要があります。
家具の倒壊などで取り出せなくなることも想定して、複数の場所に分散して保管することをおすすめします。

最低限の備蓄食品

:以下のものを用意しましょう
: 1人1日3リットルを目安に、最低3日分が推奨されています。
保存水と呼ばれるミネラルウォーターの賞味期限は5年~10年。
通常のミネラルウォーターの2倍から5倍ほど長持ちするので、備蓄用の水として最適です。
非常食: 3日分以上(詳細は後述)
他にもあると安心なもの
常備薬: 持病のある方は、処方薬を含め、必要な薬を準備しましょう。
サプリメント: ビタミンやミネラルなど、不足しがちな栄養素を補うために役立ちます。
特に水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンC)は消耗が激しいので短期間で不足しやすくなります。

災害時の衛生管理

:災害時の食事は衛生管理を徹底しましょう!
手洗いや食器の清潔保持、食品の適切な保存など、基本的な衛生管理のほか、ラップやポリ袋を用意しておき、直接食品に触れずに食べる、食器を洗わずに再利用するなどの工夫をしましょう。

<栄養バランスの取れた備蓄:何を、どれだけ?>

長期保存が可能で、かつ栄養価の高い食品を選ぶことがポイントです。
支援物資では、食物の種類が限られるので、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足しがちです。野菜や果物のジュース、栄養を強化した食品も備蓄しておきましょう。
5大栄養素の特徴と摂取できる備蓄食品
炭水化物: 主要なエネルギー源。白飯パック、パンの缶詰、シリアル、アルファ米、カップ麺などから摂取できます。
タンパク質: 筋肉の維持や免疫力の向上に不可欠。魚の缶詰、豆類、レトルト食品、長期保存の乳製品。
脂質: 非常時の効率的なエネルギー補給に重要。主菜類、ナッツ、菓子類。
ビタミン・ミネラル: ストレス軽減や免疫力向上に重要。野菜・果物の缶詰・ジュース、乾燥品。

<ローリングストックで無理なく備蓄を>

災害に備えた食品備蓄、なんだか難しそうに思えますが、実は、普段の買い物習慣を少し工夫するだけで、簡単に始められます。
その秘訣が「ローリングストック法」です。

ローリングストックの簡単3ステップ

1. 買う: 普段使う食材で賞味期限が長いものを多めに購入してストックしておく
2. 食べる: 日常的に使用し、古いものから消費する
3. 補充する: 使った分を新しく買い足す

このシンプルなサイクルを繰り返すことで、常に一定量の食品を備蓄できます。
ポイントは常温保存が可能で、賞味期限が3か月以上あるものを選ぶこと。
また、ローリングストックを始めてみたものの、意外と手が伸びず使い切れなかった・・・という声をちらほら聞きますが、普段から食べている食品、自分や家族の好きな食品を購入するようにすると失敗を避けられます。
また、買いだめ前に必要量を把握して賞味期限内に使い切れる量を購入しましょう。

ローリングストックの利点
ローリングストックでは、レトルト食品やインスタント食品など多様な食品が対象となるため、家族の好みに合ったものを選びやすく、飽きずに続けることができます。
ストレスのかかる非常時に、普段から食べ慣れている食品があることで、心理的負担を軽減できます。
また、賞味期限が近づいた食品を日常的に消費することで、無駄な廃棄を減らせるので食品ロスの削減にも役立ちます。

筆者が実際にストックしている食品
豆乳:パックのものは賞味期限が長いので、買いだめしておき、ローテーションしています。
普段は料理やソイラテに使っていますが、いざという時に水分とたんぱく質の両方を補給できるので心強いです。

ゆで小豆缶:あんこが大好きなので、ゆで小豆缶は常にストックしています。
災害時に好きな食べ物やホッとできる甘いものがあるだけでストレスケアの効果が期待できます。

ちょっと高価なおつまみ缶:自分にとってワンランク上のご褒美食品なので、賞味期限が近いから消費しなくては…!という気負いもなく、楽しく消費できます。
非常時にはたんぱく質の補給になるだけでなく、ストレスフルな状況下で、少し特別な食品があることが精神的な支えになることを期待しています。

<特殊なニーズに応える備蓄:乳幼児、高齢者など>

災害時、全ての人が同じ食事で満足できるわけではありません。
自分や同居人が食事の配慮を必要としている場合はしっかり準備しておきましょう。
乳幼児: 粉ミルク、離乳食など

高齢者: 歯や飲み込みに配慮した食品

持病やアレルギーのある方: 普段から利用している対応した食品

災害時には物流が滞り、特殊食品が手に入りにくくなることが想定されます。東日本大震災後の調査では「物資不足の状況でアレルギー対応食品を 1 週間以上入手できなかった」と回答した方が半数以上を占め、中には1カ月以上入手できなかったと回答する方もいました。

<まとめ:今日から始められる、防災への備え>

災害への備えは、決して特別なことではありません。
日常生活の中に防災の意識を取り入れ、少しずつ実践していくことが重要です。災害はいつ起こるかわかりません。
しかし適切な準備があれば、その影響を最小限に抑えることができます。今日から、少しずつでも防災への備えを始めてみて下さいね。