栄養指導講座(疾病編)~糖尿病~

こんにちは!
DietitianJob運営会社 東洋システムサイエンスの管理栄養士の徳田です。

今回は2024年7月20日に開催された「栄養指導講座(疾病編)~糖尿病~」についてご紹介致します。
本講座は、現在は順天堂大学病院でご勤務しており、長年栄養指導に携わっている小池先生をお招きしてオンライン(ZOOM配信)で開講しました。
弊社では小池先生による多数のセミナーを開催しておりますが、この講座はリクエストの多い「糖尿病の指導」で使える知識を身に付けることができる、栄養指導初級講座となっています。

当日のラインナップはこちら
1.病態生理
2.検査値
3.高血糖の原因
4.食事療法
5.薬物療法
6.運動療法

病態生理

まずは原因別4つの糖尿病それぞれの発症機構や特徴、糖尿病三大合併症といった基本を確認します。
キーワードとなる血糖値とインスリンの説明は図やアニメーション付きのスライドを用いてくださるので、どのような手順で細胞内に糖を取り込むのか視覚的に捉えることができます。

検査値

糖尿病の検査項目と、糖尿病型・糖尿病の診断、血糖コントロール目標の復習をします。
わたしは養成校卒業以来日常的に栄養指導に関わっておらず「GA」や「1.5-AG」と書かれているのを見ただけでは各基準値も何を表すかも思い出せなかったのですが、先生が数値の読み方の例をお示ししてくれました。
直近の採血でHbA1c数値が変化なくてもGAが良くなった患者さんがいたとしたら
直近2週間くらいは頑張ってコントロールできているということが分かるので、
「このままキープ出来たら次回のHbA1cも良くなってくるかも」と励ますことができると仰っていて大変勉強になりました。

高血糖の原因

高血糖の二大原因として①インスリン分泌量が少なくなってきている
②インスリンに対する体の感受性が低下している(=インスリン抵抗性)があります。
体内でこの2つの状況が起こっていることは理解していましたが、糖尿病発症の約15年前から徐々に悪化し、発症時点で膵臓機能は元の半分程度になっているというグラフを見て驚きました。

摂取する食事内容・量や遺伝要素、ストレス等の影響ももちろんありますが、食後血糖の8割は骨格筋に取り込まれるため、筋肉量の減少も高血糖の原因の1つとなります(運動療法については後述)。

ストレスと高血糖の関係も図解で示していただき、栄養指導時に「ストレスに対する防衛反応の1種です。」という回答だけではなく、どのホルモンが原因でそうなっているのか機序を理解しておくことでよりわかりやすく説明できるようになると感じました。

食事療法

糖尿病診療ガイドラインから、1日の適切なエネルギー量の設定や全体のカロリーに対する栄養素比率の設定について現在の傾向を確認しました。
先生ご自身の研究等も踏まえ、食物繊維の摂取、3食食べる(欠食しない)、血糖値上昇を抑える食材との同時摂取による血糖変動のデータを解説していただきました。
やや応用的な内容としてカーボカウントの計算、GI値のお話もありました。

カーボカウントの導入タイミングと目的について、基礎・応用の内容とともに解説していただきました。
食事(糖質)は3食で均等に摂るのが理想ですが、食事療法=エネルギー制限との考えをお持ちの方や甘いもの・主食が好きな方は均等に糖質摂取ができておらず血糖変動が大きくなりやすいです。
自身で摂取している食事中の糖質量を把握すること(=カーボカウント)ができると、食事のとり方の工夫や1日に必要なインスリン投与量を計算することができます。

GI=グリセミックインデックスは、食品を食べた後の血糖値が上がるスピードを表します。
糖質の性質や含まれている他の成分の組成で異なります。もっとも上昇率が高いブドウ糖を50g摂取したときを100として糖質を50g含むその他の食品を摂った時の上昇率を相対的に表した数値ですが、日本GI研究会では基準を白米の糖質50gで100としています。
食物繊維や油、乳製品、お酢などは血糖値を上昇させにくい食品ですので、ごはん単独で食べるよりも酢の物や牛乳と一緒に食べる方が血糖値の上昇を緩やかにすることができます。

また、セカンドミール効果といって、最初にとる食事(ファーストミール)が次にとった食事(セカンドミール)の後の血糖値にも影響を及ぼすこともわかっています。
朝食を食べる習慣がない方、時間がなくて食事をしっかりとれない方にもこの効果をお伝えし、低GIの焼き菓子などでもいいので食べるようにしてもらうのも一つの手法になると学びました。

薬物療法

糖尿病薬の種類は2000年代頃から種類が増えており、同薬効でも多くのメーカーから販売されています。
弊社では薬に特化したセミナーも開催しておりますが、ここでは糖尿病治療薬のみを掘り下げてお話していただきました。
薬の作用機序やインスリンと食事のタイミングの注意点を知ったうえで患者さんの食事状況を聞き取ることで、低血糖のリスクを取り除くこともできるのではないかと感じました。

運動療法

運動することによる急性効果として、筋収縮の刺激による糖輸送体のトランスロケーションが起き、筋肉を動かすエネルギーとして血液中のブドウ糖が大量に消費されるため血糖値が下がります。
食後血糖の8割は骨格筋に取り込まれるため、骨格筋量が増えると糖を吸収・貯蓄する場所が増えて血糖値を下げることができます。
運動を継続する慢性効果としてインスリン抵抗性が改善し、運動をしていないときでも血糖値が下がりやすくなります。
この、運動時の糖の取り込みについてもアニメーション付きのスライドによる解説のため、非常に理解しやすかったです。

参加者の声(一部抜粋・記述は回答のまま)

〇カーボカウントやインスリンの単位計算などが参考になりました。ありがとうございます。また参加させていただきます。

〇詳しく解説があり分かりやすかった。

〇わかりやすく栄養相談に必要なことがらか知れて良かったです。

〇とても分かりやすく、改めて糖尿病について学ぶことができました。 普段の業務では薬までみていないので、少し難しかったです。

〇血糖値の上がる原因から、服薬時の栄養注意事項までポイントを押さえたセミナーでよかったです。
また、先生の実験や実際のエビデンスを用いての説明で説得力が高まりよかったです。

3時間の講義とは思えない程充実した内容で、栄養指導AB、生理学、運動指導の講座を受講したことのある方はより複合的に知識を深めることができると思います。
次回開催の際は是非ご参加ください!

Dietitian Jobでは今後も栄養士・管理栄養士の皆様の日々の業務に少しでもお役に立てるセミナーを開催していきます。
交流会も随時企画しておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。