こんにちは!外部執筆スタッフの管理栄養士で乾物マエストロの資格をもつ東條尚子です。
過去の【乾物シリーズ第六弾~第八弾】で、日本料理(和食)の要となるだしの素晴らしさをお伝えさせていただきました。
そこで、今回は世界に目を向けて、【乾物シリーズ第九弾】として、外食等で自分達の身近にある西洋(フランス、イタリア)料理や中国料理のだしについて調べて、お伝えしたいと思います。
だしの分類・特徴(作り方、うま味成分等)
フランス料理
<フォン Fond>
・ソースのベースになるだし。
・素材ごとにだしをとり、料理で使い分ける。
・牛肉や鶏肉類とその骨、魚、野菜と香草を一緒にし、数時間煮込んでだしをとったもの。
・鶏のフォン Fond de volaille
・魚のフォン Fume de poisson
・子牛のフォン Fond de veau brun
フォンは、仔牛(ヴォー)の骨付き肉をニンジンやにんにく、セロリなどと煮込んだ「フォン・ド・ヴォー」が有名。
魚を煮込んで作る「フュメ・ド・ポアソン」など、一部のだしはフォンではなくフュメと呼ばれる。
<ブイヨン Bouillon (英語名:スープストック)>
・スープのベースになるだし。
・ポタージュやコンソメの素となる。
・材料の肉類の骨を入れない作り方もある。
・だしの材料を水に浸して、長時間煮込んで、だしをとったもの。
・牛すね肉等のゼラチン質が溶けだすので、フォンよりもまったりとした濃いだしになる。
・鶏肉のブイヨン Bouillon de volaille:うま味成分は、イノシン酸、グルタミン酸
・牛のブイヨン Bouillon de boeuf:うま味成分は、イノシン酸、グルタミン酸
・野菜のブイヨン Bouillon de legumes:うま味成分は、グルタミン酸、アスパラギン酸
ブイヨンは、鶏肉や牛すね肉などに野菜類、スパイスを加えて長時間煮込んだもの。
このブイヨンをベースに、さらに牛肉や野菜、卵白、スパイスなどを加えて煮詰めると「コンソメスープ」になる。
イタリア料理
<スーゴ Sugo>
・フランス料理のフォンにあたる。
・煮込み料理やソースに使われる。
・料理を濃くするために使われる。
<ブロード Brodo>
・フランス料理のブイヨンにあたる。
・肉や魚介、野菜などから煮出したもの。
・主にメインのソースベースに使い、お肉を煮込む際の煮込み汁、ボロネーゼなど肉系のパスタソースに加えて、コクとうま味、深みを出す。
〇西洋料理のだしは、「うま味」や「コク」のほかに、「豊かな香り」が重視される。
中国料理
<湯 タン>
「湯(タン)」は、だしであると同時に、スープの意味もある。
◎葷湯(ホウンタン)
・動物性のだし
<清湯(セイタン)>澄んだだし
・頂湯(デインタン):最上級のだしで、上湯に鶏ひき肉を加えて、さらに澄ませ、濃厚な味に仕上げたもの。
燕の巣やフカヒレ料理に使われる。
・上湯(シャンタン):上級なだしで、材料の鶏肉や豚肉をふんだんに使っている。
スープ料理、煮込み料理に幅広く使われる。
・二湯(アルタン):上湯を取り、残った材料に、さらに鶏ガラと水を入れて再び煮込んでとっただし。
・毛湯(マオタン):最も一般的なだしで、用途が広く、麺料理、煮込み料理を中心に、あらゆる料理に使われる。
~作り方~
1. 鶏肉と豚肉を熱湯の入った大鍋に入れ、一度煮立たせてアク抜きをする。
2. 1の材料を冷水でよく洗う。
3. 大鍋に熱湯を入れ、2の材料を、再びアクをとりながら、ひたすらじっくり弱火で煮込む。
~ポイント~
一度アク抜きをした材料をよく洗うことと火加減。強く沸騰させるとスープが濁ってしまうので、
弱火で長時間じっくりと煮込むことが大切。
<奶湯(ナイタン)>白く濁っただし
◎素湯(スウタン)
・植物性のだし
・大豆が多く使われる。そのほか、たけのこ、しいたけ、もやしなども使われる。
・素菜(スウツアイ)とか素食(スンシイ)といわれる精進料理に使われる。
〇中国料理のだしは、油を用いた濃厚な料理に合う「うま味」と「コク」のあるものが好まれる。
日本料理のだしとの共通点・相違点
◎うま味の相乗効果
・日本料理の昆布とかつお節のように、西洋料理や中国料理では、野菜と肉や魚の組み合わせにより、アミノ酸と核酸の相乗効果を、料理に生かしている。
◎作り方
・日本料理では、時間をかけてうま味や風味を高めた乾物素材(昆布、かつお節、干しシイタケ等)を使って、短時間でだしをとるが、西洋料理のだしと中華料理のだしは、生の肉や魚に野菜を加えて長時間煮出す。
まとめ
今回、だしについて世界に目を向けてみたところ、益々、だしの奥深さと神秘を感じました。
だしをうまく使いこなすことは、料理のうまさを引き出し、多くの可能性を引き出すことになると思います。
大袈裟な言い方になりますが、料理はある意味、サイエンスなのだと思います。
だしを引くとか、だしを取るのは面倒だと考えがちですが、手軽な市販品も多くでていますので、ぜひ、それらも使って、だしのある生活を楽しんでください。
参考文献:「だしの秘密」建帛社 「知っておいしいだし事典」実業之日本社