皆さんこんにちは。人材事業部横浜の下原です。
2月も間もなく終わりますが、外はすでに春の陽気ですね。
いよいよ花粉症も本格的になり、私にとっては悩ましい季節到来です。
さて、前回(大妻女子大学管理栄養士スキルアップセミナー ~臨地実習編~)臨地実習の実際についてお伝えするということでしたが、今回は番外編として、「春色簡単介護食レシピ」をご紹介したいと思います。
地域で活動する管理栄養士の大切な仕事の一つには、「口から食べることを支援すること」があげられます。
身近に対象者がいらっしゃる場合は、比較的実践的な経験が積みやすいかと思いますが、私のように、経験の浅い(またはない)人にとって、介護食は少々ハードルの高い分野となります。
どこか実践的に、また、深く学習する入り口として、入門的に学べるところはないか、と探しているときに見つけたのが、
Tokyo EAT主催の「食べるを支える サポーター養成講座(全4回)」
早速申し込み、3回目まで受講を終えたところです。
この講座では事例検討を中心に、アセスメントの方法や食形態の選び方、姿勢調節のヒントなど、食べるを支える様々なことをディスカッションを交えて学んでいます。
(ご興味のある方は『食べるを支える「嚥下調整食・介護食の食形態検索サイト」』 このサイトからfacebook をご確認ください。こちらの話はまた別の機会に)
その講座でご紹介いただいた講座が「”食べる”を支えるかんたん介護食教室」です。
今回の講師の先生は、(株)フードケアの高橋先生でした。
スベラカーゼ(酵素入りゲル化剤)を使って「春の行事食」と題して、ひな祭りやお花見など、春を感じる行事に合わせた介護食のレシピを3つ教えていただきました。
スベラカーゼは、酵素入りゲル化剤です。つまり、液状のものをゼリー状に固めます。
基本的な使い方は、「混ぜる→加熱する→固める」。実に簡単ではありますが、しっかりとポイントを押さえておかないと固まらないことがあります。
スベラカーゼを使うに際し、今回特に学んだポイントは3つです。
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その1 : 計量 が大切
少なすぎるとゼリー状に固まらなかったり、多すぎると舌でつぶせないくらいの固さになり、かむ力や飲み込む力の弱い方にとっては危険な食べ物になることも。
【計量方法】
- 正確に計量する場合:はかりで計量
- 毎回は面倒な場合:計量スプーンで計量
(小さじ5㏄=約3g, 中さじ10㏄=約5g, 大さじ15㏄=約7g)
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その2 : 温度 が大切
スベラカーゼの溶解温度は、70℃以上です。混合する食材の温度が低いとゼリー状になりません。
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その3 : よく混ぜること が大切
スベラカーゼが食材に均一に分散していることが、きれいに混ざっていることを意味します。均一に分散していないことはゼリー状に固まらない原因になります。
これらのポイントに気を付けながら、「菱餅ゼリー」と「ちらし寿司ゼリー」そして、市販の食材を用いての「桜もち」の実習をいたしました。
菱餅(ひしもち)ゼリー
【材料(4人分)】
〈餅ゼリー〉
- 温かいごはん 90g
- スベラカーゼ 8g(目安は全量の1~2%)
- 白玉粉 40g
- お湯 270g
- 食用色素(赤・緑)ほんの少量
【作り方】
- ミキサーに食用色素以外の材料全量を上から順番に入れていく(撹拌時スベラカーゼがまんべんなくいきわたるようにするため)
- 1分間程度撹拌⇒餅ゼリーの完成
- 出来上がった餅ゼリーを3等分する
- 耐熱容器に1/3の餅ゼリーと食用色素を入れて混ぜ合わせる(大まかでよい)
- (4)を電子レンジで加熱し、サラサラな状態にする(80℃程度が良い)
- (4)を容器に移す。少し冷めると(70℃前後)固まり始める。
- 固まり始めたら、赤・白・緑の順になるように次の1/3の餅ゼリーを重なるように流し込む。
- 冷蔵庫で冷やす。
※流し込む容器は、中にラップを敷いたお弁当箱や牛乳パックが便利です!
イメージはほのかに甘い「すあま」をゼリー状にした感じです。
切り分けた時はべたべたとした感じが強いように見受けられたのですが、食べてみると、口の中ではべたつかず、ふわっと柔らかく、かむ力の弱った方にもかむ楽しみを感じていただける固さだと感じました。
また、容易に適度な大きさのかたまりに咀嚼できますので飲み込む力が弱くなった方でも誤嚥のリスクが低いのではないかと思いました。
ちらし寿司ゼリー
【材料(1人分)】
〈酢飯粥ゼリー〉
・お粥・・・・・・・ 200g
・酢・・・・・・・・ 8g
・砂糖・・・・・・・ 5g
・塩・・・・・・・・ 適量
・スベラカーゼ・・・ 4.3g(全体の2%)
※お粥がない場合、ごはん①に対してお湯②の割合で代用してもよい。
また、[酢・砂糖・塩]は、市販のすし酢(小さじ2程度)で代用してもよい。
〈トッピング(実習では実施せず)〉
・にんじんゼリー(橙)
・インゲンゼリー(緑)
・たまごゼリー(黄)
・さんまのかば焼ゼリー(茶)
【作り方】
- ミキサーに酢飯粥ゼリーの材料をすべて加え、ミキサーで1分以上撹拌する。
- (1)を耐熱容器にうつし、80度以上になるまで電子レンジで加熱する。
- (2)を器に入れて、切り分けたり、型抜きしたトッピングを彩りよく盛り付ける。
参考までに・・・
【トッピングの作り方】
[にんじんゼリー・いんげんゼリー]
- にんじんやいんげんは、水(あるいは、だし汁)でやわらかくなるまで煮る。
- (1)に、出来上がり重量の(1.5%~)2%のスベラカーゼを加えミキサーで1分以上撹拌。
- 耐熱容器にうつし、電子レンジで加熱し、サラサラな状態にする(80度程度が良い)
- 冷蔵庫で冷やし固める。
[たまごゼリー]
- 卵焼きをつくる(好みでだし汁、塩、砂糖などを少々加えてよい)
- 以下、[にんじんゼリー・いんげんゼリー]と同じ
[さんまのかば焼ゼリー]
- 市販のさんまのかば焼を活用する(この場合、アナゴ煮でも、ウナギのかば焼でもお好みで選択)
- 以下、[にんじんゼリー・いんげんゼリー]と同じ
※[たまごゼリー][さんまのかば焼ゼリー]ミキサーで撹拌する際、水分が足りない場合は、水やだし汁を様子を見ながら少しづつ加えるとよい。加水が多くなるほど滑らかなゼリーになる。
酢飯粥ゼリーが冷め切らないうちに食べたためか、酢のツンとした香りが口腔内にひろがり、私は少々苦手に感じました。食べるときの温度も大切であると実感しました。
さんまのかば焼ゼリーは魚の独特の風味が残っているように感じましたが、酢飯粥ゼリーと合わせて食べると食べやすくなりました。ちらし寿司であることを考えると、「合わせて食べる」は当然ですね。形態が変わると、同じ「ちらし寿司」であるにもかかわらず、つい別物のように考えてしまいました。
食事介助の際にはそんな気働きも必要であることを学ばせていただきました。
桜もち(風)
【材料(8個分)】
- ふっくら白がゆ・・・1パック(200g)((株)フードケア)
- 食用色素(赤) ・・・少々
- 塩 ・・・・・・・・少々
- こしあん(市販)・・・200g
- サラダ油・・・・・・・ 少々
【作り方】
- こしあんにサラダ油をひとたらし入れて、つやが出るまでよく混ぜ、8個のあん玉をつくっておく。
- ふっくらおかゆに食用色素(赤)、塩少々(ほんのり塩の風味がする程度で良い)を加え、なじむまで混ぜる。
- 器にあん玉を入れ、スプーンなどを使用して、あん玉がかくれるようにまんべんなく(2)をのせる。適度に広がるので、丸くととのえて完成。
「ふっくら白がゆ」は、ふつうのお粥とちがって、適度なとろみがついており、水と米が分離しにくくべたつきが少ない、という特長を持っています。見た目にもしっかりと粒が残っているように見えますが、舌でつぶせるやわらかさ(ユニバーサルデザインフード区分3)です。
スプーンですくって食べますが、じゅうぶん「桜もち」の雰囲気を楽しめます。
時間がたっても水と米が分離しにくいため、丸い形は保持されていました。
舌でつぶせるやわらかさであることから、咀嚼機能が弱くなってきた方でもかむ楽しみを実感していただけそうです。
また、「変わり桜もち」として、誰もが楽しめるお菓子という位置づけともいえそうです。
材料が準備できたら、すぐに作れるお手軽さですので、気負わずチャレンジできますね。
お手軽な介護食入門レシピとしてぜひ一度お試しください。
【参考文献】
株式会社 フードケア 発行 「嚥下調整食づくりにおける ゲル化剤のい・ろ・は」