こんにちは、執筆スタッフの首藤です。
「薬膳」今ではあちこちで耳にする言葉ですが、どんなイメージがありますか?
私が初めて「薬膳」と言う言葉を耳にしたのは大学の時でした。
「何でわざわざ料理に薬を入れるの?」「まずそうだな…」というのがその時の正直なイメージでした。
そんな私がなぜ「薬膳」を学び始めたのか。社会人になってからの話です。
あるクリニックでドクターに『これとこれ食べてみて』といくつか食材をピックアップされました。当時の自分の知識で分析しても、なぜそれを食べたらいいのか理解できず、そのままその旨をお伝えしたところ、
「これは薬膳の考え方だ。あなたが勉強している栄養学とは概念が違う」
と言われました。ならばその概念を知りたいと思ったのがきっかけです。
「薬膳」と言う言葉は1980年代に中国で生まれた、比較的新しい言葉ですが、先人たちの知恵がたくさん積み重ねられたものです。私が学生時代感じたように、「薬」と言う言葉が入っているがゆえに、漢方の生薬、薬草など普段食べないような食材で作られた料理をイメージされがちですが、それは薬膳の一面にしかすぎません。
薬膳とは、中国伝統医学(中医学)の考え方に沿った体調に合わせて組み立てられた料理のことです。生薬などを使っていなくても、中医学の考え方に沿っていれば、薬膳と呼ぶことができます。日常食べている食材も、薬のように効能を持つと考えます。食材は薬にもなる「薬食同源」です。 ※医食同源は日本人による造語です。
いくらクコの実など薬膳食材を使っていても、理由なくただ飾った、それでは薬膳料理とは言えません。
西洋医学と薬膳の基となる中医学の違いを端的に言うと、西洋医学は病気を診て、中医学は人を診ます。
例えば花粉症。
西洋医学では花粉に着目して抗アレルギー剤で花粉に対するアレルギー反応を緩和させるアプローチ、それに対して中医学は、花粉症の大きな原因は人の身体の中にあると考え、体質改善に向けたアプローチを考えます。体質が変わっていくことで、花粉症以外の不調の改善も期待できるのです。
食材に関しても、私たちが学んできた栄養学と薬膳とでは観点が異なります。例えば「胡麻」。
食品成分表では白胡麻も黒胡麻も「胡麻」にまとめられています。薬膳の食材辞典では、白胡麻と黒胡麻は分けて記載され、効能も異なります。(その効能の違いは薬膳を語るうえで大切なことなので、また別の機会に)
栄養学と薬膳、どちらが良い悪いと言う話ではありません。それぞれ強み、観点が異なるので、双方をうまく活用すれば、食の力をさらに高めることができるのです。
私自身、薬膳を学んだことで今まで以上に食の持つ可能性の大きさを感じ、毎日の食生活がますます楽しくなりました。薬膳を学ぶ前にはできなかった食の選択が出来るようになったり、ちょっとした不調に対する提案も出来るようになったり、管理栄養士としての引き出しも増やすことができました。我ながら素晴らしい学問に出会うことができたと思っています。
薬膳についてのコラムと称しながら、今回は前書きで終わってしまいましたが、次回以降はみなさんと薬膳の楽しさ、薬膳の素晴らしさを共有していけるような内容をお届けしたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。
参考文献:中医基礎理論(上海科学技術出版社)・現代の食卓に生かす「食物性味表」(日本中医食養学会)