乾物シリーズ第六弾 ~だし~

こんにちは!外部執筆スタッフの管理栄養士で乾物マエストロの資格をもつ東條尚子です。

シリーズでお話しさせていただいている乾物の中には、皆さんご存じのように、だしに関係のある食材がたくさんあります。今回は【乾物シリーズ第六弾】として【だし】についてお話しさせていただきます。

美味しいだしを作ることを、料理用語では「だしをひく」といいます。

これは、昆布やかつお節などの素材からうま味をひき出すという意味から「ひく」という言葉が使われています。

ただし、だしのとり方などにより「だしをとる」「だしをひく」を使い分けている調理人もいます。

日本料理では、だしは、主に、昆布、かつお節、干ししいたけ、煮干しなどからとります。

それらを組み合わせることにより、色々なうま味を演出することができます。

日ごろ、給食施設でだしを扱っている方も多く、すでにご存じの方も多いかとは思いますが、日本料理でよく使われるだしのひき方をまとめてみましたので、ポイントを再確認する機会にしていただけたらと思います。

だしについて

種類・ひき方

◎一番だし(昆布、かつお節)

① 汚れを拭き取った昆布と水を鍋に入れ、弱火で10分位煮出し、沸騰直前に昆布を引き上げる。

② 鍋を沸騰させ火を弱め、かつお節を一度に入れ、すぐに火を止め、かつお節が沈むのを待ち、アクをとる。

③ 味見をして、絞らずに静かに濾す。自然にだしが落ちるのを待つ。

《ポイント》

・火にかける前に昆布を2~3時間位水につけておくとさらにうま味が出る。

・火が強いとかつお節が踊ってしまい濁るので、弱火にする。

・生臭さやえぐみが出るので、アクをとったらすぐに濾す

◎二番だし(昆布、かつお節)

水、一番だしで使った昆布、かつお節を鍋に入れ、強火にかける。

沸騰したら弱火で20分位煮詰め、追いがつおして火を止めアクをとる。

味見をし、静かに濾して、軽く絞る

《ポイント》

・追いがつおをして風味を補う。

・雑味が残らないように、丁寧にアクをとる

・濁りが出ないように静かに濾す。

◎昆布だし

① 昆布は汚れを拭き取り、水と鍋に入れ、弱火で10分位煮出す。

② 沸騰直前に昆布を引き、昆布に爪を立て、痕が残れば昆布を引き上げる。

《ポイント》

じっくりうま味をひき出すため、水から煮出す。

えぐ味やぬめりが出るので、昆布を入れたら煮立たせない

 

◎煮干しだし

① 煮干しは頭をとり、身を二つに裂き、黒い腹わた、中骨をとる。(下処理)

①を包丁で細かく刻み、鍋に水とともに入れ、一晩おく。

②を弱火で煮出し、アクをとり、15分位煮出して濾す。

《ポイント》

下処理により、苦みや生臭さがなくきれいで澄んだだし汁がとれる。

包丁で細かく刻むことでうま味が出やすくなる。

一晩漬けおくと、味がひき出せる。

時間がないときは、30分位おいてから煮出す。

◎干ししいたけだし

① 干ししいたけは水につけ、落とし蓋をして10分位おく。

② ①の干ししいたけについたカスなどを取り除き、ボウルに入れて水を加え、落とし蓋をして冷蔵庫で一日おき、濾す。

《ポイント》

ゆっくり戻すと味に深みが出る。

急ぎの時は、ひとつまみの砂糖を入れたぬるま湯に浸すと早く戻る。

 

 

 

 

栄養価

だし汁(かつおだし、昆布だし、煮干しだし、しいたけだし)100g当たりの栄養価を比較し、順位をつけてみました<多い順>。

※食品成分表2021の食品名:かつおだし(本枯れ節)、昆布だし(煮出し)

栄養価はだしに使われている素材そのものを比較すると大きく違いますが、だし汁(抽出した液体)では、それほど大きな差はありません。

だしの特徴は、うま味成分が含まれ、それらの組み合せにより相乗効果が出て、料理を飛躍的に美味しくすることです。

うま味成分

グルタミン酸<昆布、野菜類>

イノシン酸<かつお節、煮干し、肉、魚>

グアニル酸<干ししいたけ、きのこ類>

〇うま味成分の相乗効果の例

グルタミン酸<昆布>+イノシン酸<かつお節>⇒一番、二番だし

グルタミン酸<玉ねぎ、にんじん、セロリ等>+イノシン酸<肉・魚>⇒フォン、ブイヨン

グルタミン酸<長ねぎ、生姜>+イノシン酸<鶏ガラ、豚骨>⇒鶏ガラスープ

だしは、日本料理だけではなく、西洋料理、中国料理においても重要な役割をはたしているのです。

まとめ

だしは、濃ければ良いというわけではありません。主張し過ぎず、料理のうま味をひき出すことが一番大切。

煮物、みそ汁、そばつゆなど、各々の料理をひき立てるのが、だしの役割なのです。

だしを使うと、コクや味に奥行きがうまれ、塩分が少なくても美味しいと感じることができます。

最近では、粉末や液体のものなど、たくさんの商品が登場していますが、ぜひ、自分でだしをひいて、オリジナルな組み合わせを楽しみ、だしの奥深さを再認識していただけたらと思います。