回復期リハビリテーション病棟で働く管理栄養士② ~栄養管理の実際~

こんにちは。石川 章子です。

私は、管理栄養士養成校の大学を卒業後、管理栄養士として回復期リハビリテーション病棟を有する病院で勤務をしていました。

前回までは、回復期リハビリテーション病棟についてと、回復期リハビリテーション病棟での管理栄養士の役割についてお話ししました。

回復期リハビリテーション病棟で働く管理栄養士

今回は、回復期リハビリテーション病棟での栄養管理の実際についてお話ししていこうと思います。

3.回復期リハビリテーション病棟での栄養管理の実際

①栄養指導

②摂食・嚥下について

➂退院支援

①栄養指導

みなさんは栄養指導についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

大学の授業でも、栄養指導の実践などあったと思います。

栄養指導は管理栄養士にとって大きな業務の一つです。

栄養指導というと、糖尿病や腎臓病の指導のイメージが強いかもしれません。

回復期リハビリテーテーション病棟における栄養指導も、やはり件数が最も多いのは糖尿病の栄養指導です。

その他にも慢性腎臓病や脂質異常症、高血圧、減量のための指導などです。

②摂食・嚥下について

また、回復期リハビリテーション病棟の特徴として、脳血管障害で入院してくる患者は嚥下障害を有している場合が多いです。そのため、家族への嚥下調整食の指導も不可欠でした。

栄養指導を行う際には、栄養指導を行う対象患者が、どのような年代なのか、復職の希望があるのか、どのような家族構成なのか、経済的に問題はあるか、調理能力はどのくらいか、買い物には行けるのかといった様々なことを考慮しながら栄養指導の方向性を考える必要があります。

入院患者の多くは、75歳以上の高齢者です。

また、高齢の夫婦のみで暮らしている世帯もとても多いです。

高齢の患者に栄養指導を行う場合、どの程度の理解力があって、指導した内容がどの程度実行できるのかが鍵になります。

難しいことを言ってもなかなか理解はしてもらえません。

また、長年の食生活を変えるのは難しいことが多いです。

そのため、今の食生活の中で変えられそうなポイントに的を絞って、レベルも低く設定して指導をする必要があると思います。

高齢者の場合、食べてはいけない指導ではなく、食べる指導をする必要性を感じていました。

高齢の一人暮らしの方の場合、食事の準備をするのも大変なので菓子パンだけで食事を済ませてしまったり、必要な栄養がきちんととれていないこともあります。

低栄養になってしまったら、筋力低下による転倒や嚥下障害による誤嚥性肺炎の発症など、様々なリスクやADLの低下を引き起こしかねません。

きちんと食べて、必要な栄養がとれるようにするために、簡単に食べられるものを組み合わせる方法や食事の調達の方法を考える必要があります。

時には、地域の配食サービスの利用や冷凍の宅配お弁当の活用も検討します。

そういったサービスを活用するには、高齢の患者のみでは難しいこともあるので、サポートを得られそうな家族も一緒に栄養指導をするようにしていました。

高齢者以外にも、復職を目指す50〜60代の場合はまた違ったアプローチが必要です。

復職を目指す場合は、家庭だけではなく職場や外食での食事のとりかたなどを考える必要があります。

また、何より脳血管疾患を再発をしないために、食生活の改善は重要です。一緒に暮らす家族も一緒に指導をすることが多いです。

また、減量が必要な患者もいます。入院中の体重管理を退院後も継続できるような指導も必要となることがあります。

回復期リハビリテーション病棟の栄養指導における特徴の一つとして摂食・嚥下障害に対しての嚥下調整食の指導があります。

急性期の病棟から回復期リハビリテーション病棟に入院してきた脳血管疾患の患者は、状態により様々ですが、経管栄養を離脱して経口摂取が開始し、徐々に食形態が上がっていきます。

中には経管栄養のまま入院してくる患者もいます。

回復期リハビリテーション病棟の目的は、入院前の状態に近づけることです。そのため、嚥下のリハビリを行い、VFやVEも行いながら食形態を上げていきますが、患者によっては入院前に食べていた食事の形態よりも低い形態で退院せざるを得ないこともあります。

退院支援

また、入院中に外出や外泊をする場合、その地点での食形態の食事を食べてきてもらう必要があるため、退院前だけでなくそういった時も指導が必要になります。

指導の際には、病院ではどのような食事の形態を食べているのか、なぜそのような食事形態にする必要があるのか、嚥下障害についてや、具体的な調理方法などを伝えます、必要があれば、一緒に調理をして指導をすることもあります。

もし、調理をすることが難しい場合は、市販の嚥下調整食品の選び方、購入場所などを紹介します。

水分にとろみ調整剤でとろみをつける必要があるときには、どの分量でどのように作るのかを実演しながら伝えていました。また、とろみ調整剤の購入方法もあわせて伝えていました。

このように、回復期リハビリテーション病棟における栄養指導は、急性期の病院やクリニックなどの栄養指導とは少し異なる部分があるかもしれません。

しかし、入院中の患者だからこそ患者の生活背景などをしっかり把握した上で、その人にあった指導が行えるのは良い点だと思います。

また、困った時には他職種に相談して栄養指導の方向性を決めることもありました。

入職したばかりの頃は、どうしたらよいのか戸惑うことも多かったですが、回数を重ねるうちにいろいろな引き出しが増えていき、様々な患者に対応できるようになっていきました。

とはいっても、患者の一人一人、ベストな指導も違うので、毎回毎回が勉強でした。

栄養指導をして退院した患者が元気そうに、外来に通院している姿をみかけるととてもうれしく思いましたし、栄養指導のやりがいも感じました。

今回は栄養指導についてお話ししました。

次回は摂食・嚥下についてお話ししていこうと思います。