こんにちは。外部執筆スタッフの管理栄養士 長谷川晴美です。
管理栄養士奮闘記と題しまして、有料老人ホームでの経験をお伝えしていきます。
今回は 栄養ケアについてです。
皆様の何かのお役に立てれば、嬉しいです。
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老人ホーム 管理栄養士奮闘記 ~ノロウイルス蔓延時の様子と対策~
有料老人ホーム 特定施設における栄養ケア
有料老人ホームの特定施設では、栄養ケアマネジメント加算が取れませんでした。
加算が取れないのがわかったときには、とても残念な気持ちになりましたが、栄養ケアは必須ですので、栄養ケアマネジメントの手順に沿って改革していきました。
就職した当初は、体重測定もほぼ行われておらず、食事摂取記録や血液検査の決まり事もない状態でしたので、各部署に賛同と協力を得ながら、徐々に体制を整えていきました。
介護職員から「最近〇〇さんの食事量が減っているみたいだけど、体重とか血液データは大丈夫?」というような問い合わせも来るようになり、役立っていることが実感できた時は嬉しかったのを覚えています。
サービス向上のために有料老人ホームの第三者評というものがあります。
加算はとれませんが、実際に評価者が来て、様々な角度からホームの状況を客観的に判断する「質そのものの評価」になるもので、栄養ケアの評価もありました。
栄養ケアは実際に行っており、なによりも証拠になる書類がしっかり整っていたのでいい評価を受けることができました。
しかし、どんな制度でも「書類!書類!」で書類作成に時間が追われることが問題点と感じますが・・・
時代もかわり、特定施設でも2018年に栄養スクリーニング加算がとれるようになりました。
管理栄養士がいなくても、体重測定や栄養ケア等の記録があればOKというものです。
加算が取れるレベルに、きちんとやってきて、そして制度もかわってよかったなあと思いつつ、ちょうど自分の退職と重なり、見届けられなかったのが残念でした。
栄養ケアの流れ
体重測定と血液検査の徹底をし、それを私が毎月入力して、体重減少(%)やアルブミン低下、逆に体重が増え続けている等を確認します。
心配な方がいた場合はヘルパー会議で伝え、原因や対策を考えケアをしていきます。
要介護以外のお元気な方は、食事摂取記録がない方が多いので、記録を開始することから始める場合もあります。
悪化する場合は、ヘルパー会議とは別に栄養検討会議を行いさらに策を考えます。
栄養検討会議では、スクリーニング・アセスメント様式の表や栄養ケア計画書を使っていました。
加算をとっていないので家族のサインはいりませんが、お金のかかることやケアがかわったことは電話等で、介護長からご家族や身元引受人等にお伺いや報告をするという流れでした。
栄養ケアの実際
体重減少や低栄養の方には、まずは食が進むよう、食事形態の工夫はもちろんのこと、とにかく食べてもらえるように、食事内容を嗜好に合わせて変更することもしていきました。
お元気なころの嗜好を把握しておけば、介護時に役立つかと思いきや、実際に関わってみると、意外と嗜好がかわることに気づかされ、都度都度リサーチの日々でした。
極端な例でいうと、魚が苦手で肉が大好物という方には毎日肉というケースや寿司好きの方には食事を止めて外部の寿司を提供するというケースもありました。
介護する人の声掛けや食事介助の仕方でも食事量が変わる場合もあるので、食事介助時における成功例や失敗例なども共有していきました。
たいていは、食事量がとれない方が多いので、食事以外に、様々なメーカーや味の栄養補助飲料(125㎖200㎉)やゼリー等で、お口に合うものを探りながら食事にプラスして提供していきました。
各メーカーの試供品は本当に助かり、営業の方に感謝です!
特に、高カロリーの商品(400㎉)が出たときは、「待ってました!」という感じでした。
が、酸味が強い、粘度が合わないなどで好まれなくその商品を断念することもありました。
その他、貧血の人には、間食として鉄入りウエハースをご紹介したところ、改善したかたもいました。
介護食サイドでは、高栄養で好みのものを探ってくれていました。
あんこと生クリームの組み合わせ、ハーゲンダッツアイス、牛乳入りココア、温泉卵、チーズは結構好まれる方が多く効果的でした。
これらは、個人購入なのでイトーヨーカドーの販売、配達にかなり助けられていました。
(余談:以前は、プライベート時に入居者の買い物をする職員も多く、問題視され、外部業者と契約し改善したという流れ)
栄養ケアの事例
アルツハイマーの方で、白いご飯に手を付けないことが多く体重減少等がすすみました。
仕方がないとあきらめる職員はおらず、「白色」がいけないのかもと、カレーを白ご飯が見えないようにかけたり、桜でんぶやふりかけを混ぜてみたところ、ご自分で召し上がるようになりました。
特に桜でんぶがお気に入りのようで、体重は戻っていきました。
糖尿病で外部の病院に通われている方がいました。かかりつけ医に、「糖尿病食ではなく、みんなと同じ食事内容にしても問題はないか」「おやつを食べさせてあげたい」などの職員の思いを手紙に書いて受診時に持っていてもらい、許可をもらったこともあります。
メニューは変えずに量や調理法で調整し、おやつは低カロリーや低糖質のものを選んで提供したところ、入居者も満足され血糖コントロールも問題なく経過していきました。
肥満のあるかたは、食事は盛り付け等でわからない程度に減らしたり、自炊の方はお買い物に付き添ったり、冷蔵庫チェックをしながら栄養指導することが有効の方もいました。
水分がとれない方には、とろみ剤の調整から始まり、飲み物の種類を変えたり、既製品の水分ゼリーを利用したり、十分注意を払いながら小さい氷で水分補給がうまくいったかたもいました。
経管栄養は、ナース管理の体制でしたが、体重減少等の相談をすると医師に確認してくれたり、他のメーカーを試すこともしてくれました。
栄養ケアマネジメント講習会等で情報収集
保健所の栄養ケアマネジメントの講習会にはよく参加していました。
その時の講師で、栄養ケアマネジメントの立ち上げに関わった方がいて、スクリーニング指標の、「アルブミン3.6g/dl 以上が独り歩きしてしまった」と話されていたのが印象的でした。
系列の特別養護老人ホームの管理栄養士さんに相談したところ、「3.0以上ならよしとしている。」
病院時代の先輩からは、「むくみが原因でアルブミンが下がることもある」等、経験上の意見も聞くことができました。
実際、BMI16.5。アルブミン2.0台でも認知症もなく身の回りのこともでき、長生きされている方もいましたので、数字はあくまでも目安というのは経験上感じることができました。
有料老人ホームでは、低栄養から肥満、糖尿病や腎臓病などの持病がある方、認知症の方がおられます。
様々なケースの入居者がいる中で、多くの職員がいろいろな案をあげてくれたことに、本当に助けられました。
多くの方々と接することによって、知識はもちろん、経験やスキルを養えます。
栄養士一人では微力でも、他部署や家族の協力が得られれば大きな力になります。
あきらめない心で栄養ケアを継続していただきたいです。応援しています。
次回は、接遇とマナーについてお伝えする予定です。