こんにちは。執筆スタッフの赤松留美です。
私は普段、東京・千葉で管理栄養士として特定保健指導の仕事をしています。
この仕事を始めて3年間で約1200名の方とお話しさせていただきました。
その中で肥満の原因が単に食べすぎや運動不足だけではないと感じることがよくあります。
その原因のひとつが「早食い」です。
特定保健指導の生活習慣チェックの項目にも食べる早さを確認する項目がありますよね。
ただ限られた栄養指導の時間内では摂取カロリーや消費カロリーの話に重点が置かれがちで、重要視されないことが多いかもしれません。
その理由は、よく噛んで食べることがどう肥満解消につながるのかあいまいだからではないでしょうか。
この記事では、食べる速度が体に与える影響についてご紹介いたします。
ゆっくりよく噛んで食べると早食いよりエネルギー消費量が増加
急いで食べるよりも、よく噛んでゆっくり食べる方が、食後のエネルギー消費量(DIT;食事誘発性体熱産生量)が増加することを示す実験データがあります。
東京工科大学大学院理工学研究科の林直享(なおゆき)教授らは、300キロカロリーのブロック状の食品をできるだけ急いで食べた時と、塊が無くなるまで噛んで食べた時の食事誘発性体熱産生量の変化を調べました。
(出典 東京工科大学2014.5.19)
早食いとよく噛んだ場合とでは、消費カロリーに25倍以上の差が出たのです。
仮に体重70㎏の人がこの食事を1日3回摂取すると仮定した場合、どれだけ噛むかによって1年間で食事誘発性体熱産生量に約13,260kcalの差が生じます。
これは脂肪を1㎏落とすのに必要なエネルギーを7000kcalだとして計算すると、なんと約1.9㎏に相当。
70㎏の人が脂肪を1.9㎏落とすためには、ジョギング(時速7㎏)でフルマラソンを5回走破しなくていけません。
なかなかハードルが高いですよね。
そう考えると、ゆっくりよく噛んで食べることは誰でも簡単に取り組めるので、おすすめしやすいのではないでしょうか。
「よく噛んで食べましょう」とおすすめする時のポイント
食事誘発性熱産生を改めておさらい。
私たちが消費する総エネルギー量の約10%を占めているエネルギー量。
基礎代謝量が約60%、身体活動量が約30%なので、食事だけで消費エネルギーが10%もあるなんてあなどれません。
口や胃腸を動かして栄養を消化吸収する際にエネルギーが使われているとは思ってもみない参加者の方がほとんどです。
そこで私は栄養指導の際、食べることは胃腸を動かす「体内エクササイズ」と伝え、食事は体にとって運動でもあるので、短いより長い方がいいと思いませんか、と問いかけるようにしています。
もちろん、よく噛むメリットは他にもあるので伝え方は人それぞれだと思いますが、よろしければ会話の引き出しのひとつとして心に留めておいていただけるとうれしいです。
参考
・東京工科大学大学院理工学研究科 林直享 2014.5.19
・国立健康・栄養研究所、改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」
赤松留美
管理栄養士/健康食育シニアマスター/ライター
頑張らない料理で健康をサポートする管理栄養士。
36歳まで不健康OLだった経験をもとに、シンプルな食生活で心と体を元気にするための情報を発信している。
1200人以上にメタボリックシンドロームの方向けの個別栄養サポートを実施。
お米を中心にした食事によるダイエット法を伝えるセミナー等を開催している。
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