こんにちは、執筆スタッフの首藤です。
前回のコラム(薬膳に親しもう! 第4回 身体を構成する三要素①)では、身体を構成する三要素「気」「血」「津液」についてお伝えいたしました。
やや親しみにくい内容だったかもしれませんが、何となくでも押さえておくと体調の把握や食材選びに役立ちます。
早速今回はご自身の「気」「血」「津液」にトラブルが無いかチェックしていただき、おすすめの食材をご紹介させていただきます。
「気」のトラブル
「気」は一言でいえば生命を維持するエネルギーです。
□疲れやすい
□冷えやすい
□かぜをひきやすい
□食欲がない
□汗をかきすぎる
□胃下垂など内臓の下垂がある
→ 元気の源、温める力、免疫力、内臓を固定する力など気の働きが弱まった状態です。
食事で気の働きを補うことが大切なのですが、実際、気の働きを補うとされる食材は幅広く、米、芋類、南瓜、きのこ、肉類、魚類、大豆、甘酒、なつめ等、多くの食品が挙げられます。
芋類の中でも、山芋は乾燥させて漢方薬の材料になる程、効能に期待されています。
疲れる→食欲が落ちる→疲れやすくなる
と、負のスパイラルになりがちです。
食欲が無いときは好きな具材で作った雑炊、山芋のとろろなど、消化に良いものを選んだり、「飲む点滴」と言われる甘酒を飲んだりなど、食べられそうなものを少しでも口にするようにしましょう。
□ため息をつきやすい
□怒りっぽい
□月経前に胸が張って痛む
□げっぷやしゃっくりが多い
□肩こり
□冷えやすい
→ 気の流れが滞った状態です。
イライラしたり、張った痛みを感じたり、身体も心も張りつめがちです。
気の流れが悪くなると、血流も悪くなるので、気の巡りはスムーズにしておきたいものです。
食事ではリラックス効果をもたらせるように、ハーブや柑橘類など香り高いものを摂り入れましょう。
お肉やお魚の風味づけにしたり、デザートに柑橘類を選んだり、ハーブティやジャスミン茶もおすすめです。
その他、そば、玉ねぎやピーマンも気の流れを良くするとされています。
ワインもリラックス効果があると言われているので、お肉やフルーツをワイン煮にしてみるのもよいでしょう。
飲まれる場合は適量で(笑)
こちらで紹介した食材とひとつ前の「気を補う」食材を組み合わせることで、補った気が巡りやすくなります。
「血」のトラブル
「血」は血液そのものとその働きを含み、全身を巡り栄養を与えていきます。精神活動との関わりも深いです。
□顔色が青白い
□目や肌が乾燥する
□不眠がち、あるいは夢が多い
□物忘れしやすい
□立ちくらみやめまいがある
□月経が遅い・出血量が少ない
→ 血の量・質が不足した状態です。
身体の乾燥は水分や皮脂量だけでなく、血の不足も影響します。
血の量・質を増やすためには赤身の多い肉、レバー、ほうれん草など鉄分を多く含む食材や、魚類ではマグロや鮭、血合いを持つ青魚が特におすすめです。
人参、ひじき、卵、黒木耳、黒胡麻、黒豆も血を補う働きをするとされています。
黒色や赤色の食材が多い傾向があります。
またナッツ類、プルーンも良いので、小腹が空いた時の間食にしてもいいでしょう。
※中医学でいう「血」は不足していても、生化学検査の数値に現れないことが多いので、検査では問題が無くても、これらの症状がある方は要注意です。
□顔色が暗い
□目の下にクマがある
□あざができやすい、治りにくい
□月経不順・月経痛がひどい
□四股の末端が冷える
→ 血の流れが悪く停滞し、栄養が全身に巡りにくくなっています。
循環をよくする食材として、黒米、黒豆、納豆、栗、クレソン、セロリ、玉ねぎ、青梗菜、ニラ、パセリ、ブルーベリー、プルーン、青魚、鮭、牛肉、甘酒、サフラン、酢などが挙げられます。
黒米も入れた栗ご飯にすると、栗の色も映えて見た目も良く、効能もより期待できます。
「津液」のトラブル
「津液(しんえき)」は、体内の正常な水分の総称のことで、汗・尿・分泌液・消化液など血液以外の水分を指し、身体を潤す働きや、老廃物を排泄させる働きがあります。
□むくみやすい
□身体が重くてだるい
□お腹を押すとポチャポチャした感じがする
□めまい
□乗り物に酔いやすい
→ 体内に過剰な水分がたまっている状態です。
この状態は消化吸収の働きも鈍りやすいので、脂っこいものや味の濃いものは控えましょう。
豆類、はと麦、大麦、アスパラガス、えんどう、胡瓜などウリ科のもの、とうもろこし、茄子、白菜、海藻類などが水はけをよくしてくれると言われています。
ウリ科の食材や茄子は身体を冷ましやすいので、冷えが気になる方は加熱するか、生姜や唐辛子など温める食材と組み合わせることをおすすめします。
何気ない症状や、当たり前になってしまっていた症状が、実は「気」「血」「津液」のトラブルから来ていることもあります。
またチェック箇所が「気」「血」「津液」いずれにも当てはまるケースもあると思います。
「気」「血」「津液」はそれぞれバランスを取り合う密接な関係なので、同時にトラブルが起きやすいのです。
季節の食材に加え、チェック箇所に挙げられた食材を摂り入れて、気長に体質改善に取り組んでいきましょう。
参考文献:
現代の食卓に生かす「食物性味表」:日本中医食養学会
実用中医薬膳学:辰巳 洋
※前回のコラムはこちら
薬膳に親しもう! 第4回 身体を構成する三要素 その1
薬膳に親しもう! 第3回 食性
薬膳に親しもう! 第2回 五味の作用
薬膳に親しもう! 第1回 薬膳とは