こんにちは、執筆スタッフの首藤です。
前回のコラム(薬膳に親しもう! 第3回 食性)は、温める・冷やすという食材の性質(食性)についてでした。
自分に必要な食材を選ぶ、また体質改善に取り組むためには、身体の状態を知ることがとても大切です。
これからは中国伝統医学(以下中医学)の視点で食材だけではなく、身体についてもお伝えしていきます。
違った視点で身体を捉えることで、今まで分からなかった不調の原因や対処法が見えてくるかもしれません。
今回は身体を構成する三要素についてお伝えします。
中医学では「気」「血」「津液(しんえき)」の三つの要素が、身体を構成し生命活動を維持する物質とされています。
物質とは言っても、西洋医学でいう自律神経系や内分泌系の概念に近いものがあるような気がします。
「気」
まずは「気」から見ていきましょう。
「気」と言うと、どういうものをイメージされますか?
学び始めた頃、「気」という言葉が出てきた瞬間、中医学がとても不思議な世界に見えたのが当時の正直な印象でした(笑)
ただ「気」の付く言葉を思い浮かべてみると、
元気、電気、気持ち等…目に見えない、
でも何か存在を感じられるものばかり。
そう考えれば「気」と言う言葉に慣れることに時間はかかりませんでした。
中医学で言う「気」とは一言でいうと、生命を維持するエネルギー。
目に見えるものではありませんが、無いと困る、生命維持には欠かせないものなのです。
「気」の働き
- 推動作用…動いていないものを動かす。
血液や汗など排泄物は自ら動くわけではありません。体内を巡ったり、体外に排泄したりする時には「気」が働いています。
- 温煦(おんく)作用…体温を維持する。内臓を温める。
- 防衛作用…体表を保護して病気の原因が入らないようにする。抵抗力。
- 固摂作用…あるべき場所に固定する。
例えば血液が血管の中にある、内臓があるべき場所にある、汗や排泄物の不要な漏れを防ぐという一見当たり前のことが、実は「気」の働きによって維持されています。
- 気化作用…あるべき状態に変化させる。
飲食物が消化されて「気」「血」「津液」へ、「津液」が汗や尿へ等、身体に必要な状態に変化させてくれているのは「気」の働きです。
生まれてくるときに親から受け継いだ「先天の気」と、生まれた後に飲食物や呼吸から作られる「後天の気」があります。
つまり生まれ持った「気」の性質はありますが、食も含めた生活習慣にも大いに影響を受けるのです。
「血」
次に「血」についてです。
中医学で言う「血」は西洋医学で言う血液よりも広い概念で、血液そのものと、巡ることで全身に栄養を与えていくという働きまで含みます。
精神活動との関わりも深く、眠りや記憶、精神状態に大きく影響します。
不足すると貧血症状だけではなく、不眠・物忘れ・イライラなどにも繋がりやすいです。
「津液(しんえき)」
そして「津液(しんえき)」についてです。
体内の正常な水分の総称のことで、汗・尿・分泌液・消化液など血液以外の水分を指します。
津液には身体を潤す働きや、老廃物を排泄させる働きがあります。
例えば鼻であれば鼻水、喉であれば痰となり、不要なものを体外に排出させます。
日本で烏骨鶏はなかなか手に入りにくいですが、上海では近所の市場で新鮮なものが手に入っていました。
2時間少々、ホロホロになるまで煮込みスープにしていました。
烏骨鶏は「気」「血」「津液」すべて補える食材です。
一緒に入っている赤い実はなつめです。
日本ではチップスにしたものを見かけることが増えてきました。
なつめは「気」「血」を補ったり、消化機能を鍛えたりする働きがあると言われています。
寒い季節に作ったので、生姜も入れています。
うま味出し、そして効能にも期待して、きのこ類も一緒に入れました。
きのこ類はβ⁻グルカンを含み、菌活として食べられるほど免疫力も期待されていますが、薬膳の観点から見ても免疫力を指す「防衛作用」を含めた「気」を補う働きが期待出来ます。
きのこ類の中でもしめじには「血」、エリンギには「津液」を補う働きを持つと言われています。
調味料は具材からうま味がでるので、醤油、塩、酒(あれば紹興酒)でシンプルに。
これからきのこの出番が多くなる季節なので、烏骨鶏ではなくても、手羽肉ときのこ類、生姜等温性の食材を一緒に煮込んでスープやお鍋にすると、身体を労わる温かい一品になります。
「気」「血」「津液」はそれぞれ影響しあい、バランスよく巡っていることが大切です。
働きや量のバランスが悪くなると不調や病気に繋がります。
次回は「気」「血」「津液」のトラブル・バランスチェックを行い、整えていくためにおすすめの食養生をご紹介したいと思います。
※前回のコラムはこちら