薬膳に親しもう 第2回 五味の作用

こんにちは、外部執筆スタッフ管理栄養士の首藤です。

 

前回のコラム(2/14掲載分)ではプロローグが中心でしたので、本題に入っていきたいと思います。

 

中国伝統医学(以下中医学)では、生薬や食材の性質を「性」「味」「帰経」「効能」で表します。

例)「生姜」 性…温、味…辛、帰経…脾・胃・肺、効能…化痰、止咳、解表、散寒、健脾、 解毒、温中、止嘔

(参考:現代の食卓に生かす「食物性味表」 日本中医食養学会)

 

食材そのものが持つ栄養素で捉えるというより、身体の感覚的なものでみていくイメージでしょうか。

性質のうち今回は「味」についてお伝えします。

 

中医学では「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹」を基本の味とし、それらをまとめて「五味」と言います。

味は舌で感じるだけではなく、身体に作用をもたらすとされています。生薬の味といえば苦いイメージがありますが、食材同様それぞれの生薬にも「五味」があります。

 

早速どんな作用があるのか見ていきましょう。

 

「酸味」食材例:酢、レモン、梅、サンザシ、五味子など

引き締めることで、出過ぎるものを止める作用を持ちます。具体的に言うと多汗や下痢症状などを止める作用を言います。また体液を生み出す働きもあります。

 

「苦味」食材例:苦瓜、よもぎ、お茶、アロエなど

熱・老廃物・湿気等身体に溜まっている余分なものを取り除く働きをします。また体内の湿気を乾燥させる作用もあります。

 

「甘味」食材例:穀類、芋類、はちみつ、黒砂糖、なつめなど


滋養強壮の働きがあります。他にも身体の緊張を緩めたり、痛みを緩和させたりしてリラックス効果をもたらします。

※スイーツのような砂糖による甘みというよりも、食材自体がもともと持っている甘みをイメージされてください。

 

「辛味」食材例:生姜、葱、にんにく、しそ、胡椒、唐辛子、シナモンなど

身体を温める作用があり、体表を開き、汗など不要な物質を発散させたり、気や血の巡りを良くしたりする働きをもちます。

 

「鹹味」食材例:海藻類、えび、いか、貝類など

しこり、結石、便などの固くなったものを柔らかくし下す作用があります。

※「鹹」は塩辛いという意味を持ちますが、しょっぱいものと言うよりミネラルを多く含むものが鹹味の食材に挙げられます。

 

いくつか食材例を挙げておりますが、食材一つに対して、一つの味を持つというわけではなく、複数の味を持つ食材もあります。

 

味の作用は、それぞれの味を感じた時の身体の反応を思い出してみるとイメージしやすくなります。

特に酸っぱいものや辛いものを食べた時のことを思い出してみると腑に落ちやすいのではないでしょうか。

 

またそれぞれの『五味』には作用しやすい『臓器(五臓)』があります。特定の味だけを過剰に摂ると、作用する臓器を傷め、五臓同士のバランスまでも崩してしまいます。(五臓については、また別の回でお話しします。)

 

暑い季節には酸味のあるものを食べて汗をかき過ぎないようにしたり、寒い季節には辛味を持つ食材を摂り入れたりなど、食材選びや味付けを工夫することで季節やその日の体調に合わせた食養生ができます。

少しでも献立やレシピ作成の参考になれば幸いです。

次回は『食性』をテーマに食材の温める力・冷ます力についてお話しさせていただきます。

 

参考文献:中医基礎理論(上海科学技術出版社)・現代の食卓に生かす「食物性味表」(日本中医食養学会

 

前回のコラムはこちら
薬膳に親しもう! 第1回 薬膳とは