こんにちは、執筆スタッフの髙橋美枝です。
今年もあっというまに・・・秋!秋刀魚の季節です。
今年は水揚げがまずまずということで、手頃な値段で秋刀魚が購入できることを、期待したいと思っております。
今回は、秋刀魚などの青魚やえごま油、亜麻仁油などに含まれるオメガ3脂肪酸が、精神疾患、精神症状の改善へつながるという内容について、お伝えしたいと思います。
うつ病などの精神疾患には慢性炎症が関与する!
オメガ3脂肪酸は
- 青魚に含まれるEPA、DHA
- えごま油に含まれるαリノレン酸
などの総称であり、これらをn-3系脂肪酸と言われているのは、みなさんご存じだと思います。
また、これらの油には健康に良い影響を与えるというエビデンスが確立されておりEPA製剤などは、保険適応で処方が認められています。
さらに、オメガ3脂肪酸には、抗炎症効果があることも分かっています。
ところで私達が通常、怪我をした時に、ばい菌が入り赤くなる炎症を急性炎症と呼び、体の防御反応と考えられます。
急性炎症は痛みを伴い、目で見て分かるので炎症が起きていることが容易に判断できます。
一方、自覚症状を感じにくく、外から炎症が起こっているのか、分かりにくい慢性炎症は、特殊な血液検査などで持続的な弱い炎症があることが分かります。
弱い炎症だとしても、炎症が続くことにより、体の機能が徐々に蝕まれ、ついには機能しなくなってしまう可能性がある怖い炎症です。
そして興味深いことに、うつ病などの精神疾患は、慢性炎症が関与していると考えられています。
うつ病や精神疾患で、慢性炎症が続いた時、体は炎症を止めるように、ストレスホルモンを出しますが、このストレスホルモンは炎症が続いている間、分泌されることになるので、脳の細胞を傷つけてしまう要因になります。
オメガ3脂肪酸のうつ病などの精神疾患への有用性は?
オメガ3脂肪酸には、抗炎症効果があるため、EPAを主成分としたサプリメントを使用した場合、「オメガ3脂肪酸は、うつ病に一定の効果がある」というデータが報告されています。
ただし、対象人数が少ない、投与期間や、オメガ3脂肪酸の種類や割合が一定でないということ、さらには効果が期待できるのは、診断基準を満たすうつ病、もしくは重症のうつ病というメタ解析がある一方、閾値下での抗うつ状態でも効くといったメタ解析もあり、意見がバラバラである点も、十分留意する必要があると考えられます。
エビデンスの蓄積が期待されている!
うつ病だけでなく、PTSDの症状がオメガ3脂肪酸で緩和されるのかどうかというランダム化比較試験(RCT)は、ほとんど知られていませんが、東日本大震災で被災地に派遣された医療チームの隊員のPTSDが緩和されるかどうかRCTを行ったデータがあり、結果、PTSDにもオメガ3脂肪酸が有効である可能性を示唆しました。
また、身体外傷患者を対象としたオメガ3脂肪酸のRCTでは、男性よりも女性の方がPTSDの症状が軽減されるというデータも報告されています。
我が国は、日常の食事からオメガ3脂肪酸を摂取する割合が世界的にも多い国ということもあり、我が国におけるエビデンスが求められています。しかしながら、まだまだエビデンスの蓄積が不十分であり、今後のオメガ3脂肪酸がどのような疾患に効果的であるの
か、まだまだ研究し解明される必要があると感じます。
身近である青魚に含まれるオメガ3脂肪酸が、いろいろな疾患へ適応されると良いなと思います。
ぜひ今後の参考にしてみて下さい!
参考:日本生物学的精神医学会誌 27巻4号 オメガ3系脂肪酸による精神疾患へのアプローチ