栄養管理に必要な薬の知識講座③~薬と食品の相互作用~

こんにちは。DietitianJob運営会社 東洋システムサイエンス栄養士の山田です。
今回は、2025年1月19日(日)に実施した「栄養管理に必要な薬の知識講座③~薬と食品の相互作用~」の様子をご紹介致します。

本講座は、病院・調剤薬局、介護施設、専門校の講師と幅広くご活躍されている、薬剤師の佐伯有美先生を講師としてお招きし、zoomを使ったオンライン講座で実施いたしました。

栄養管理・栄養指導をする現場で、ふと患者様・利用者様の服用されている薬と食品の食べ合わせ飲み合わせが気になることがあると思います。
そんな方に向けて、薬の姿、食品との組み合わせがダメな理由を学べる講座となっております。

当日のラインナップはこちら
1.カフェインを含む飲料
2.グレープフルーツジュース
3.アルコール
4.牛乳
5.サプリ・ミネラル類
6.食品やたばこ

相互作用の基本

食品と薬の相互作用の主な仕組みは①薬の効果が弱くなる②薬の効果が強くなる③効果が強くなったり弱くなったりする 
の三つに大別されます。基礎として薬物動態(体の中での薬の動き)の図示から、「代謝」の作用と薬物代謝酵素を説明いただきスタートです。

1.カフェインを含む飲料

カフェインには利尿作用・胃酸分泌・脳と心臓の興奮作用があり、依存性もあります。
1日の摂取上限400mgということで、飲料1杯あたりのカフェインの含有量を表にしてご紹介くださったのですが、コーヒーよりも玉露に多く含まれていることに驚きました。
〇カフェインを含む薬
市販薬はカフェインを含むものが多くあるそうです。
眠気防止薬の成分はほぼカフェインらしく、1回分約200mgは1日上限の半分に達する量です。
抗アレルギー薬・解熱鎮痛剤・栄養ドリンクにも少なからず含まれているとのことですので、今の時代カフェインの過剰摂取に注意が必要です。
〇睡眠薬(反対の動き)
睡眠薬や精神系の中枢に作用する薬は、カフェインの興奮作用で作用が低下する可能性があるとのことです。
組み合わせによっては飲む意味がなくなるので注意が必要です。
〇テオフィリン(働きが似ている)
気管支喘息で使用する薬です。
中毒になりやすいので血中濃度を測定しながら使用するのですが、構造がよく似ているためカフェインによってテオフィリンの作用が増強されて、頭痛・動悸・めまいなどの副作用がおきることがあります。

「中毒」という言葉が出たので、ここで薬の用量について、無効量・有効量・中毒量・致死量の説明をしていただきました。
有効量とは投与により効果が得られる量の下限~上限の幅で、薬によりその幅は異なります。
幅が狭いとすぐに中毒量になってしまうと教えていただき、そのような薬は血中濃度を測りながら使用するそうです。
危険性のある薬は、特に食べ飲み合わせに注意が必要ですね。

2.グレープフルーツジュース

薬との併用がダメなフルーツとして有名ですが、なぜなのかご存じでしょうか。

柑橘系に多く含まれる「フラノクマリン類」の成分が薬物代謝酵素を阻害し、薬の効果が強く出る可能性があり良くないとのこと。
影響をうける薬には、高血圧治療薬(カルシウム拮抗薬)、睡眠薬、スタチン系の脂質異常症治療薬などがあります。

服用するタイミングによってはグレープフルーツを楽しめるかもとのご説明もいただきましたが、極力避けたほうが良さそうです。
温州ミカンなどのように、柑橘系でも成分を含まないものがあり、わかりやすく表にして下さっているので資料は永久保存したいです。

3.アルコール

自身のこととして気になる方も多いのではないでしょうか。
まずはアルコールの中枢神経作用・血圧低下作用・血糖値の変動・肝臓の代謝酵素の誘導や阻害する作用についてと、吸収・代謝、代謝の流れを説明いただきます。

男女、また人によって、飲む量が同じだったとしても反応が変わるのでひとくくりにするのが難しいそうです。
飲酒により眠くなる人がいれば寝られなくなる人も、かたやほんの少量で気分が優れない人もいます。
代謝の流れを学び、アセトアルデヒドが残ったまま寝てしまうことが二日酔いの原因だったのだと改めて理解しました。
〇アセトアミノフェン
解熱鎮痛剤で市販薬にも含まれる成分です。アルコールが酵素を誘導し通常よりも代謝が進むことで、早く効果がなくなるうえ、毒性物質が増え肝機能障害が起きる可能性があるとか。
〇糖尿病治療薬
アルコール自体にもインスリンへの影響がありますが、肝臓でアルコールの分解が優先されてブドウ糖の合成が後回しになり、低血糖を起こす可能性が増えます。
〇睡眠薬
アルコールの作用が人により違うこともあり、眠気の増強や効果減弱など何が起こるかわからない。
中枢神経に作用する(血液脳関門を通過する薬)には注意が必要。
〇セフェム系抗菌剤
嫌酒作用が起き、併用後10分で顔面紅潮・頭痛・動悸・嘔吐・発汗などの症状が現れるそうです。原理の説明から薬の名前までご紹介下さいました。
〇アルコールのまとめ
併用は適量の飲酒であれば4時間以上は開けての服用を。但したまの飲酒か常飲か飲酒量の多少など相互作用は変わるので個別対応が必要とのこと。他にも沢山の薬があり、今回は特に危険なものをピックアップしてくださいました。

4.牛乳

腸溶錠は字のごとく小腸(アルカリ性)で溶けるようコーティングされていて市販薬だと下剤に多い。牛乳で胃中のpHが変わることにより胃で溶け、大腸での効果が減弱するばかりか胃腸障害の原因に。

5.ミネラル(硬水やサプリメント)などの金属成分

抗菌剤はキレート形成で吸収が低下するため対処方法をご紹介いただきました。
カルシウムとαカルシドール(ビタミンD製剤)は働きが似ており、血中のカルシウム濃度が上昇し高カルシウム血症の可能性があり、胃腸症状や精神症状、進行すると意識消失など死に至るケースも。

6.食品やたばこ

プロテイン

プロテイン飲料自体との関連性のはっきりとしたデータはないが、パーキンソン治療薬はアミノ酸が吸収される場所から吸収されるので、高タンパク食によって摂取するアミノ酸が多すぎると消化管や脳でも吸収を阻害される

ビタミンK

血栓予防のワルファリンと効果を打ち消しあう働きをする。納豆は1パックでも問題になる量のビタミンKを多く含むほか、クロレラや青汁も量に注意しましょう。ビタミンKとの相互作用の心配がない血栓予防薬もあるそうです。

栄養ドリンク

配合されている主な成分が、アルコール・カフェイン・ビタミン類・タウリンなどなので、本日説明してきました注意する必要がある相互作用を検討されるといいでしょうとのことでした。

他にもご紹介下さる内容が色々ありましたが、特に食品以外の嗜好品『タバコ』は必見でした。
栄養士にとって必要不可欠だといえる内容を毎回最新情報で講義くださるので今後も期待です。

参加者の声(一部抜粋。記述は回答のまま)

〇例えば、阻害という言葉を先生が「薬物効果の処理が減る」とわかりやすい言葉に置き換えながら説明してくださるので、内容が入ってきやすかったです。佐伯先生のセミナーは以前も受講していますが、復習を兼ねてまた、受講したいと思っています。ありがとうございました。

〇血圧の薬とグレープフルーツジュース、血液サラサラの薬と納豆やクロレラ、キレート作用など、言葉として知識を持っていてもそれがどういう機序なのかをわかっていない部分もあったので、今回のセミナーで理解できてよかったです。

〇とても興味深くセミナーを受講する事が出来ました。あっという間の3時間でした。業務だけでなく生活していく上でも必要な知識で、受講して良かったです。

〇学ぶことばかりで、とても良い刺激になりました。内服とアルコール、喫煙の関係が良く分かり業務へ活かせそうです。ありがとうごさいました。 参加が遅れ、お電話いただいて申し訳ありませんでした。助かりました。

〇内容が盛り沢山でしたが、関心のある内容でしたので時間は早く感じました。 持ち歩けるようなA4サイズの一覧に後から見返せるようにまとまっていると 嬉しいのですが、それは自分の復習として整理しようと思います。 本日は有難うございました。

Dietitian Jobでは今後も栄養士・管理栄養士の皆様の日々の業務に少しでもお役に立てるセミナーを
開催していきます。ぜひご参加くださいね!