管理栄養士は他職種に比べなぜ給与が低い?

こんにちは、外部執筆スタッフの福永です。
私はこれまでに何社かの転職経験がありますが、転職を検討する際、業務内容や雇用形態、福利厚生などさまざまな条件の中でも、「給与が良いこと」は上位の要素として考えていました。
しかしながら、業務内容や拘束時間などを優先して探すとどうしても、給与の低さという壁にもぶつかっていました。
今回は管理栄養士の職場別の給与比較と、なぜ管理栄養士の給与が低いのか、についてお話をさせていただきます。

■まずは、職場別での年収を比較してみましょう。

(参考:転職サイトDietitian Job
病院・クリニック
年収:約240万~350万円

福祉・介護施設
年収:約280万~320万円

保育園・幼稚園
年収:約280万~320万円

食品会社
年収:約280万~400万円

企業
年収:約280万~400万円

フリーランス
年収:収入は大きく変動

あくまで一般的な目安であり、地域や職場、経験、スキル、雇用形態などによっても異なりますが、月平均の給与は26万円程ですので、ボーナスや残業代が加わると年収としてはもう少し金額が上がりそうですね。
ただ、求人サイトの中央値をとるともう少し下がりそうな印象です。
栄養士に比べ、管理栄養士は資格手当などが上乗せされ年収はやや高くなりますが、他の専門職に比べ平均年収が低いという現状もあります。(参考:令和5年賃金構造基本統計調査

国家資格でもあり、厚生労働省が「2035年、日本は健康先進国へ。」といったスローガンも掲げる中、まさしく健康のサポートができる専門職としては悲しい状況ですよね・・・。

■では次に、管理栄養士の年収が低い理由を探っていきましょう。

1. 利益を生み出しにくい

特に、公的機関や病院などの医療機関では予算が限られており、栄養指導や食事管理といった業務に対して高額報酬を見込めず、他の医療職と比べ直接的な収益を生み出すことが難しいです。
例えば、病院で国から診療報酬としてもらえる給食費は1日2,010円(1食あたり670円)と決められています。
(参考:厚生労働省関係の主な制度変更(令和6年4月)について
管理栄養士が計画を立てたり栄養指導に関わったりすることで、診療報酬や介護報酬による売り上げを増やすことはできますが、管理栄養士の存在によって獲得できる点数がそもそも少ないため、人数を増やしても利益が増えるわけではありません。
ですので、現場で人員増加を求めても、経営側からしたら利益貢献度の低い管理栄養士は増やさず人件費を抑える傾向があるように感じます。
(参考:厚生労働省 医科診療報酬点数表

2. 需要と供給のバランス

管理栄養士を必要とする施設では、配置基準に従った以上の人数は予算の関係上配置することが少ないため1施設1名で配置になることが多く、市場における需要と共有のバランスが合っていないこともあります。
厚生労働省のデータによると、毎年平均1万人程が管理栄養士の国家試験に合格していますが、それほど就職先が増加していないことにより管理栄養士の数が多すぎてしまっているのも現状です。

これにより、「給与が安くても優秀な人材を採用できてしまう」ため全体としてベースアップにつながりにくいです。
(参考:厚生労働省 管理栄養士国家試験実施状況)
仮に給与や待遇に不満があって退職者が出たとしても、条件を変えずに雇用できてしまえば改善の見込みも少ないですよね。

3. 独占業務ではない

管理栄養士は資格所持者しか名乗ることができない「名称独占」の資格ではありますが、資格を持っている人しか業務に従事できない「業務独占」の資格ではありません。
ですので、管理栄養士ではない人が栄養相談をしても法律上は問題がなく、他の職種の人でも対応できてしまう業務もあることが給与の低さにも関係しているということも耳にします。

上記に関しては、私見や側聞した内容も含まれていますが、このような要因が組み合わさることで、給与が低くなる傾向があります。
しかし、昇給制度や経験・役職により手当のある職場も多くあります。冒頭の年収比較で同じ職域内でも最低額から最高額で120万円の差があったように、専門性を高めたり、追加の資格を取得したり、経験を積むことで、給与の向上が期待できる可能性も大きいです。
福利厚生が充実していることで手厚いサポートが得られる場合もありますので、額面以外もよく確認するといいですね。

また、給与面だけではなく「管理栄養士として自分がどうありたいか」を見つけられると、働き方の選択も変わってきますし、自分の設計図も立てやすくなってくるのではないでしょうか。
女性の場合、結婚や出産などライフイベントにより環境や働く条件にも変化が出てくるため、その時の生活にあったライフワークバランスを叶えることができる働き方を探すというのも職を選ぶ動機の一つですよね。

理想を実現させるための小さな第一歩として、セミナー参加やさまざまな分野の書籍を読むなど自己研鑽をして自信をもって他職種に進言できるようになったり、学会発表なども率先して行い「管理栄養士だからできること」をもっと知ってもらうような取り組みを皆さんにもしていってほしいです。
一人一人が管理栄養士は専門性をもって健康に貢献できるという市場価値を示すことで、説得力を持って給与や待遇などの働き方の提案ができれば、管理栄養士が活躍する場も今以上に広げることもできますし、職場環境の改善にもつながるのではないでしょうか。

今は働き方の選択も増え、フリーランスとして自分の知識や経験を強みとして活躍している方も多くいらっしゃいますよね。受け身の姿勢ではなく、研修会やセミナー情報をチェックし新しい情報を取り入れたり、ビジネスマナーを身に着けたり、理想の働き方をしている人に話を聞いてみたりなど、積極的に行動することが大切です。

私自身も常に学びのアンテナを張り「まずはやってみよう」のチャレンジ精神を持ち続けていますし、周りに相談し解決の糸口をもらうことも多々あります。
今回お話した内容が何か踏み出すきっかけとなれば嬉しく思います。

※参考資料
保健医療2035
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/future/